抗がん剤治療による脱毛は、多くの患者さんが経験する辛い副作用の一つです。
特に外見への影響は、治療中の生活の質(QOL)を大きく低下させる原因となります。
これに対して、水素吸入療法が注目されています。抗酸化作用を持つ水素が、脱毛の原因とされる酸化ストレスを軽減する可能性があるとされていますが、果たしてどうなのでしょうか。
本記事では、抗がん剤による脱毛の概要と水素吸入療法が抗がん剤による脱毛症に与える影響について、現時点での知見を詳しく解説します。
抗がん剤治療による脱毛は、多くの患者さんが経験する辛い副作用の一つです。
特に外見への影響は、治療中の生活の質(QOL)を大きく低下させる原因となります。
これに対して、水素吸入療法が注目されています。抗酸化作用を持つ水素が、脱毛の原因とされる酸化ストレスを軽減する可能性があるとされていますが、果たしてどうなのでしょうか。
本記事では、抗がん剤による脱毛の概要と水素吸入療法が抗がん剤による脱毛症に与える影響について、現時点での知見を詳しく解説します。

脱毛症とは、正常な毛の生えかわりと比べて多い量の毛が抜ける状態のことです。
また脱毛症は、抗がん剤治療に伴う副作用として起こることもよく知られています。
一方で、すべての抗がん剤で脱毛症が起こるわけではないとも言われています1)。
ここでは抗がん剤による脱毛症の基本情報について説明させて頂きます。
抗がん剤治療による脱毛は、抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞も傷害してしまうことが主な原因です。
特にターンオーバー※が早い皮膚細胞(毛髪の元となる毛母細胞含む)が影響を受けやすいと言われています。
※ターンオーバーとは、私たちの細胞の生まれ変わりのことを指します。
また、抗がん剤投与そのものに酸化ストレスを発生させる要素があることも3)、毛母細胞に傷害が加わる理由の一つとされています。
抗がん剤の種類によって、脱毛症の出やすさに大きく違いがあります4)。
たとえば、乳がん治療で使われるアンスラサイクリン系やタキサン系の抗がん薬は脱毛率が高く、頭髪の8割以上が脱毛した患者さんが94%いたと報告されています5)。
一方で、肺がんや胃がんなど様々ながんに用いるプラチナ系の抗がん剤は、比較的脱毛の頻度は低いですが、それでも24%に起こると報告されています6)。
抗がん剤による脱毛は、治療を開始して2, 3週間後くらいから始まります1)。
眉毛、まつ毛や髪の毛が抜けるので、顔の変化が特に目立ちますが、実際には全身の体毛において脱毛が起こります。
抗がん剤治療による脱毛は、治療終了後1~2ヶ月で再生が始まり、3~6ヶ月でほとんど回復します。そのため、無理な治療はせず自然な発毛を待つのが一般的です。
十分に発毛するまでの間は、かつら(ウィッグ)、つけ毛、バンダナ、帽子などの使用で対処する場合もあります。
抗がん剤による脱毛症の対策として、頭皮を冷却させる治療が保険外診療として用いられる場合があります7)。

抗がん剤治療中の避け難い副作用の一つとして脱毛症があり、患者さんの生活の質(QOL)を確実に下げています。特に男性よりも女性の方がその影響は大きいでしょう。
ここでは、抗がん剤による脱毛症への水素吸入療法に関する医学研究について解説いたします。
抗がん剤による脱毛症への水素吸入療法の効果を直接的に検証した研究は今のところ報告は確認できませんでした(2024年9月現在)。
ですが水素吸入療法には抗酸化作用があることは研究で明らかとなっています8)。
そして、酸化ストレスをもたらす活性酸素が皮膚の細胞を障害することを示した研究論文もあります9)。
また、水素吸入療法によるものではありませんが、活性酸素の除去によって毛髪の成長因子の分泌を促す「毛乳頭細胞」を活性化する可能性が韓国の研究チームから報告されています10)。
これらの結果を踏まえますと、あくまでも仮説の段階ではありますが、水素吸入療法が抗がん剤による脱毛症の症状改善に効果をもたらす可能性はあると考えられます。
上述のように抗がん剤による脱毛症に対して水素吸入療法を実施した研究自体がないため、予防効果については現時点では不明です。
水素吸入療法の抗酸化作用が脱毛に対して予防的に働くかどうかについては議論のわかれるところです。
というのも、ニュージーランドからの2023年の報告で、ラットの発毛部に過酸化物を皮下注射して酸化ストレスを与えることで、抗がん剤による脱毛症から保護されることも示されているからです11)。
つまり適度な酸化ストレスは脱毛に対して保護的に働く可能性があり、酸化ストレスを減少させる水素吸入療法は、条件によっては不利に働く可能性も否定できません。
いずれにしても今後の水素吸入療法についての知見の蓄積が待たれるところです。
抗がん剤による脱毛という現象は、身体的な見た目の影響だけではなく、心理的な負担も大きく、患者さんのQOL(生活の質)を下げる原因となります。
この副作用の発現に、活性酸素や酸化ストレスが関わっていることは明らかです。
しかし先ほどご紹介した研究のように、適度な酸化ストレスが脱毛予防に良い効果をもたらす可能性も示されています。
したがって、単純に活性酸素や酸化ストレスを抑えることが、抗がん剤による脱毛の予防や改善につながるとは言い切れない状況であります。
一方で、脱毛以外のその他の副作用にも酸化ストレスが大きく関わっていることも報告されています。そのため、過剰な酸化ストレスを軽減するという点においては、水素吸入が活用できるかもしれません。
繰り返しになりますが、抗がん剤による脱毛に対して、酸化ストレスをどの程度調節すべきかについての知見がまだ十分に集まっていないというのが実情です。
今後さらに研究が進められ、水素吸入の抗がん剤による脱毛症の予防や改善効果が解明されていくことを期待したいと思います。
水素吸入に関する研究論文・疾患別考察・基礎知識をまとめる編集チーム。特定メーカーに属さない中立的な立場で、医師監修・ファクトチェック体制のもと、エビデンスに基づく情報を発信しています。
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