脳梗塞や脳出血が引き起こす「血管性認知症」。
アルツハイマー型についで多い認知症であるこの疾患は、従来の治療では改善が難しいとされてきましたが、最近注目を集めているのが『水素吸入療法』です。
体内の酸化ストレスを減らすこの方法は、本当に認知症予防や症状改善に効果があるのではと期待が寄せられています。
本記事では、血管性認知症の基礎知識と、水素吸入療法の可能性について最新の研究結果をもとに解説します。
《この記事の監修ドクター》
脳梗塞や脳出血が引き起こす「血管性認知症」。
アルツハイマー型についで多い認知症であるこの疾患は、従来の治療では改善が難しいとされてきましたが、最近注目を集めているのが『水素吸入療法』です。
体内の酸化ストレスを減らすこの方法は、本当に認知症予防や症状改善に効果があるのではと期待が寄せられています。
本記事では、血管性認知症の基礎知識と、水素吸入療法の可能性について最新の研究結果をもとに解説します。
《この記事の監修ドクター》

血管性認知症とは、脳への血流障害によって生じる認知機能の低下を指します。
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により脳組織が損傷し、その結果として記憶・判断力などの認知機能が障害される疾患です。
血管性認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多く、全認知症の約20%を占めています。1)
血管性認知症の主な原因は、脳の血管が狭くなったり(動脈硬化)、詰まったり、破れて出血することです。
特に高血圧、糖尿病、心臓病、コレステロール異常、喫煙といった生活習慣病やリスク因子が発症に深く関与します。
脳梗塞が複数起こると「多発梗塞性認知症」、脳の深部小さな血管の障害が進行すると「ビンスワンガー病」とも呼ばれる「小血管性認知症」になるなど、原因病変のタイプによって分類されます。
血管性認知症の症状は、障害された脳の部位によって様々です。一般的には記憶力の低下も見られますが、アルツハイマー型に比べると判断力や注意力の障害が目立ちます。
具体的には以下のような症状が現れます。
症状の進行は「階段状」になることが特徴です。これは複数回の小さな脳卒中が起こるたびに認知機能が落ちるためです。
一度悪化した症状が時間とともに少し改善することもありますが、新たな脳梗塞や脳出血が再び起こると、認知機能が大きく低下するといった経過を辿りがちです。
現時点で血管性認知症そのものを根本的に治す治療法は確立されていません。
治療の中心は原因となる脳血管障害の予防とリスク因子の管理です。
具体的な治療アプローチとしては以下のようなものが挙げられます。
これらの治療は、これ以上脳梗塞や脳出血を起こさないようにすることと、失われた機能を代償したり生活を工夫することが主な目的です。しかし、既に失われた脳機能を取り戻すことは難しいのが現状です。

水素(H2)は宇宙で最も小さな分子であり、2007年に「水素ガスが選択的に悪玉の活性酸素を除去し、酸化ストレスを軽減する」ことを発見して以来、医療ガスとして注目されています。2)
非常に小さな分子なので細胞膜や血液脳関門を通過しやすく、全身に行き渡るとされ、体内では抗酸化・抗炎症作用やミトコンドリア機能改善など多彩な効果を示すことが報告されています。3)
水素吸入療法の血管性認知症に対する臨床研究はまだ限られていますが、関連領域の研究から効果が期待されています。ここでは、それらの研究をもとに水素吸入と血管性認知症の関係について解説していきます。
軽度認知障害(MCI)の方73名を対象とした研究では、水素水(1日あたり約300mL)を飲む群と、プラセボ群に分け、1年間継続しました。
全被験者で見た場合には統計的に有意な差は認められませんでしたが、アルツハイマー病のリスクを高める遺伝子(APOE4)を持つサブグループでは、水素水を飲んだ群の認知機能検査(ADAS-cog)のスコアが改善し、特に言葉の想起力の項目で有意な改善が見られました。4)
研究者たちは「APOE4保有者では酸化ストレスの影響が大きいため、水素による抗酸化効果の恩恵を受けやすい可能性がある」と考察し、水素水の継続飲用が一部高リスク群の認知症進行を抑制し得ると結論づけています。
水素水よりも効率的に多くの水素を取り込める水素吸入でも、同様の効果が得られるかもしれません。
血管性認知症の大きな原因である脳梗塞に対し、水素吸入が脳のダメージを減らし、後々の認知機能低下を防げるかについても初期的なデータがあります。
日本で行われた臨床研究では、軽~中等度の脳梗塞患者50名を対象に、水素吸入を1日2回各1時間を取り入れた群と標準治療のみの対照群に25めいずつ振り分けて経過を比較しました。5)
結果は、水素を吸入した群では重大な副作用は一切認められず、MRIで梗塞巣の相対的な信号強度が低下しました(これは梗塞によるむくみや壊死が減ったことを示唆します)。
また、脳卒中の重症度を測るスコア(NIHSSスコア)や日常生活動作の自立度を評価する指標(Barthel指数)の改善が、対照群より有意に良好でした。
脳卒中後の後遺症が軽ければ、それだけ将来的な認知症発症リスクも下がる可能性があります。したがって、水素吸入は血管性認知症の「二次予防」(脳卒中後に認知症へ進まないようにすること)に貢献し得ると考えられます。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病は血管性認知症を発症するリスク要因となり、血管性認知症の治療アプローチとしてもこれらの改善・管理が行われます。
水素吸入はこういった高血圧や糖尿病の予防・改善の補助的な治療法としても注目を集めており、実際に複数の研究で良好な結果が示されています。
例えば、高血圧患者60名を対象に行われたランダム化比較試験(RCT)では、水素吸入を1日4時間、2週間続けた結果、以下の変化がみられました。6)
高血圧は血管性認知症を誘発する脳卒中のリスク要因であるため、これが水素吸入によって改善することで間接的に血管性認知症の予防につながる可能性があると考えられます。
>> 【医師監修】水素吸入で高血圧が改善?最新エビデンスと効果を徹底解説
水素吸入療法の血管性認知症に対する効果についての研究は、まだ初期段階にあります。現時点では「限られた臨床研究による示唆」の段階で、医学界で標準治療として認められるには至っていません。
しかし基礎研究では、水素が抗酸化作用、抗炎症作用、細胞死を防ぐ働き、神経再生促進作用など多面的なメカニズムを通じて、脳血管障害による認知機能低下を予防・改善する可能性が示されています。
小規模な臨床研究でも脳卒中急性期や一部のMCI患者での改善効果が報告されており、特に副作用がほとんどない高い安全性は大きな利点です。
今後、大規模試験や長期効果の検証が必要であり、現時点では標準治療の代替ではなく補助的療法として位置づけられます。将来的にはエビデンスの蓄積により、ガイドラインに記載される可能性も十分に考えられるでしょう。
水素吸入療法を検討する際は、主治医と相談しながら無理のない範囲で取り入れることが望ましいといえます。
水素吸入による脳血流の改善や酸化ストレス軽減が、血管性認知症のリスク低減につながる可能性が高まっている。初期的なヒト臨床研究の結果は有望であり、標準治療としての確立に向けた検証が進むことが望まれる。
(水素健康活用研究所のエビデンス評価基準はこちら)
このコラム記事は、一般的な医学的情報および最新の研究動向をもとに作成しておりますが、読者の方の個別の症状や体質などを考慮したものではありません。また、医学的アドバイス、診断、治療に代わるものではなく、特定の製品や治療法の効果・効能を保証、証明するものでもありません。健康上の問題がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師などの専門家に必ずご相談ください。本コラム記事の情報をもとに被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。
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水素吸入に関する研究論文・疾患別考察・基礎知識をまとめる編集チーム。特定メーカーに属さない中立的な立場で、医師監修・ファクトチェック体制のもと、エビデンスに基づく情報を発信しています。
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医師
伊藤たえ 先生
水素が血管性認知症に対して、有効性を示唆する研究結果が報告されたことは、とても興味深いです。特に注目すべきは、高血圧や脳卒中など危険因子への多面的な効果です。高齢化社会で増加する認知症に対し、身体に負担をかけず副作用の少ない予防・治療法の開発は重要課題です。現時点でのエビデンスは限定的ですが、さらなる検証によって、水素吸入療法が血管性認知症の補助療法となりうる可能性も考えられます。