日本では年間14万人が脳梗塞を発症し、そのうち11%が死亡、46%が後遺症によって要介護となるいわれています。
脳梗塞は突然脳の血管が詰まることで起こるため、日々の予防や対策が欠かせません。
そんな脳梗塞に対して近年水素吸入療法が予防・改善に役立つのでは?と注目を集めています。
本記事では、水素吸入療法が脳梗塞の予防や改善に効果があるのかについて、現時点で発表されている研究データに基づいて考察していきます。
《▼YouTube動画版での解説▼》

日本では年間14万人が脳梗塞を発症し、そのうち11%が死亡、46%が後遺症によって要介護となるいわれています。
脳梗塞は突然脳の血管が詰まることで起こるため、日々の予防や対策が欠かせません。
そんな脳梗塞に対して近年水素吸入療法が予防・改善に役立つのでは?と注目を集めています。
本記事では、水素吸入療法が脳梗塞の予防や改善に効果があるのかについて、現時点で発表されている研究データに基づいて考察していきます。
《▼YouTube動画版での解説▼》
脳梗塞は何らかの理由で脳の血管が詰まってしまう疾患の総称です。くも膜下出血、脳出血と合わせて脳卒中と呼ばれます。[1]
日本における脳梗塞は年間約14万人の発症と推計され、そのうち死亡が11%、後遺症により介助が必要になる人は46%、介助なしで生活できる人は43%と報告されました [2]。
症状は脳梗塞の大きさ、左右、部位により異なります。意識障害、片麻痺(左右どちらか一方の手足が動かしにくい)、構音障害(呂律が回らない)、嚥下障害、高次脳機能障害、失語、膀胱直腸障害(頻尿、便秘)、運動失調などがあります。
治療は、発症早期で適応があれば、点滴薬で血栓を溶かす「血栓溶解療法」やカテーテルで血栓を取り除く「血栓回収療法」が行われます。エダラボンという薬を用いた脳保護療法も行われます。
再発予防として、抗血小板療法や抗凝固療法が行われます。不整脈や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子の管理も重要です。
自宅退院や社会復帰に向けて、急性期から回復期、維持期へと継続したリハビリテーションも行われます。
抗酸化作用を持つ水素を吸入する水素吸入療法が脳梗塞の予防や改善に効果があるのかについて、これまでに出ている研究データをもとに考察していきたいと思います。
水素吸入が脳梗塞を直接的に予防できるかを調査した研究・論文はまだありません。しかし、以下に述べるように脳梗塞の危険因子に対して有効な可能性があり、間接的に脳梗塞の予防にも期待が持てます。
高血圧状態にしたマウスでの実験では、1日1時間の水素吸入は日中・夜間を通じて血圧を下げる作用があることがわかりました[3]。
また、ヒトを対象としたランダム比較研究においても水素吸入による血圧低下が報告されています。[4]
高血圧は脳梗塞を引き起こす重要なリスク要因であるため、水素吸入による血圧の低下は予防の面でポジティブに捉えられるでしょう。
また、別の動物実験では、水素含有の多い水をたくさん摂取すると、アテローム性動脈硬化病変が減少することがわかりました[5]。同様に動物実験での研究では、水素含有の多い水を摂取することによりLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減少させ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増加させると報告しました[6]。
吸入と水素含有の多い水摂取とを同じように語ることはできませんが、同じ水素の効果ということを考えると期待は持てそうです。
血管が詰まって虚血の状態になった脳では、フリーラジカルという不安定な物質が産生されます。フリーラジカルがまだ虚血になっていない回復可能な領域(ペナンブラ)を破壊することで、症状をより重くします。
エダラボンはフリーラジカルの働きを抑える薬剤で、ガイドラインでも適応がある場合の投与を勧められています。水素吸入もこのフリーラジカルの働きを抑える機序があると考えられています。
エダラボンと水素吸入の併用の比較試験があります[7]。この研究では、脳幹梗塞の患者でエダラボンに水素吸入を併用したところ、MRI画像で脳梗塞の範囲が水素吸入を併用しなかった場合に比べて減少したということを示しました。
また、水素吸入のランダム化比較試験もあります[7]。25人ずつ2つのグループで、一方には従来治療と水素吸入、もう一方には従来治療とエダラボンに割り付けて、神経症状などを2週間観察しました。水素吸入を行ったグループでは、MRI画像の所見、神経症状のスコア(NIHSS)、日常生活動作のスコア(Barthal Indexなど)の改善があったとのことで、エダラボンよりも有用な可能性があることが分かりました。
いずれの研究も単施設の研究であること、短期間の研究で長期的な成果が分からないことなど研究の限界はありますが、大きな有害事象もないことで今後の研究が期待されます。
脳梗塞は生命に関わる疾患で、生命の危機を乗り越えたあとも障害が残る例が多いです。かつては一度発症してしまえば再発予防をしながら、リハビリテーションを行うしかありませんでした。
近年では、血栓溶解療法や血栓回収療法などの新規の治療の発展が目覚ましいです。リハビリテーション分野でもロボットなどの先進機器も増えてきています。しかし、対応できる医療機関や治療の適応が限られていることから、発症した人全員が恩恵を受けられるわけではありません。また、どれだけ良い治療と言っても出血や血管損傷などの有害事象のリスクもあります。
水素吸入は場所を選ばず、明らかな有害事象もないという点で、従来治療の欠点を補った治療となる可能性があります。
脳梗塞は人生に大きな影響を与える疾患ですので、後遺症を少しでも減らすための新しい治療が開発されるのは大変喜ばしいことです。今後の新しい知見、実用化に期待したいです。
水素吸入に関する研究論文・疾患別考察・基礎知識をまとめる編集チーム。特定メーカーに属さない中立的な立場で、医師監修・ファクトチェック体制のもと、エビデンスに基づく情報を発信しています。
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