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研究報告

水素吸入で認知症に関わる血液指標が幅広く改善

Effects of Hydrogen Gas Inhalation on Community-Dwelling Adults of Various Ages: A Single-Arm, Open-Label, Prospective Clinical Trial(さまざまな年齢の地域在住成人に対する水素ガス吸入の効果:単群・非盲検・前向き臨床試験)
40〜70歳の成人51名が4週間水素を吸入したところ、認知症に関わる血液指標が複数改善。安全性にも問題はなかった。

結論

40〜70歳の成人51名に4週間の水素吸入を行ったところ、認知症に関わる複数の血液バイオマーカー(血液検査で測れる健康指標)が改善した。アミロイドβやタウは低下し、神経を守るBDNFは有意に上昇した。酸化ストレスや炎症の指標も改善しており、安全性にも問題はなかった。

研究の背景と目的

アルツハイマー病は発症の20年前から脳内で変化が始まるとされ、血液バイオマーカーを使った早期発見に注目が集まっている。

水素ガスには有害な活性酸素を選択的に除去する作用があり、認知機能への好影響も報告されているが、幅広い年齢層で認知症関連の血液指標を追跡した研究は限られていた。

本研究では、40〜70歳の地域在住成人に4週間の水素吸入を行い、酸化ストレスや認知症関連バイオマーカーの変化を調べた。

研究方法

40〜70歳の地域在住成人を対象とした臨床試験で、全員に同じ水素吸入を行い、開始前と4週間後の血液指標を比較した。54名がスクリーニングを受け、3名が脱落※1し、最終的に51名が試験を完了した。

項目内容
対象40〜70歳の地域在住成人51名
(平均年齢54.0±8.9歳)
研究デザイン単群の前向き試験
(全員に同じ介入を行い前後を比較。対照群なし)
水素吸入の条件水素2%+空気(98%)の混合ガス
カニューレで鼻から吸入
吸入時間1日30分、4週間
主な除外基準AD既往歴、自己免疫疾患、
6か月以内に他の臨床試験に参加した者
臨床試験登録ClinicalTrials.gov: NCT05891938
(米国の臨床試験データベースに事前登録済み)

※1 脱落理由:COVID-19感染2名、同意撤回1名

主な評価項目は以下の4カテゴリにわたる。

  • 白血球数(WBC)(安全性の指標)
  • ROS・NO(酸化ストレスの指標)
  • 認知症関連バイオマーカー(BACE-1、Aβ1-40、Aβ1-42、t-Tau、p-Tau、BDNF)
  • 炎症・血管系のマーカー(MCP-1、IL-6、VEGF-A)

研究の主な結果

本研究の結果から、以下の3点を取り上げる。

本研究の主な結果
  • ① 酸化ストレスの指標が低下した
  • ② 認知症に関わるバイオマーカーが幅広く改善した
  • ③ 炎症・血管系のマーカーも低下した

① 酸化ストレスの指標が低下した

酸化ストレスはアルツハイマー病の進行に深く関わるとされる。本研究では、水素吸入の前後で血清中のROS(活性酸素種)とNO(一酸化窒素)の量を比較した。

水素吸入前後のROS・NOの変化は以下の通り。

水素吸入前後のROS(A)とNO(B)の血清中濃度(Rahman et al., 2023, Fig.3より引用)
(A)血清中のROS蛍光強度。(B)NO濃度(μM)。いずれも水素吸入後に有意に低下した。* p < 0.05、** p < 0.01。(Rahman et al., 2023, Fig.3より引用)
指標役割
ROS(活性酸素種)細胞を傷つける酸化物質
NO(一酸化窒素)過剰になると酸化ストレスの一因になる

ROSはおよそ半分に、NOも大幅に低下した。つまり、水素の抗酸化作用によって「細胞を傷つける攻撃役」が抑え込まれた状態が確認された。

② 認知症に関わるバイオマーカーが幅広く改善した

アルツハイマー病の進行には複数のタンパク質が関与する。本研究ではそれらの血液中の濃度を水素吸入の前後で測定した。

アミロイドβとタウの血清中濃度の変化は以下の通り。

水素吸入前後のAβ1-40(A)、Aβ1-42(B)、t-Tau(C)、p-Tau(D)の血清中濃度(Rahman et al., 2023, Fig.6より引用)
(A)Aβ1-40(pg/ml)、(B)Aβ1-42(pg/ml)、(C)t-Tau(pg/ml)、(D)p-Tau(pg/ml)。いずれも水素吸入後に有意に低下した。*** p < 0.001、** p < 0.01、* p < 0.05。(Rahman et al., 2023, Fig.6より引用)
バイオマーカー役割
BACE-1Aβ(アミロイドベータ)を作り出す酵素
Aβ1-40脳に蓄積する異常タンパク質
Aβ1-42同上(より凝集しやすい型)
t-Tau神経細胞の損傷を反映するタンパク質
p-Tau同上(リン酸化型)
BDNF神経の成長・修復を促すタンパク質

アルツハイマー病の「原因物質」とされるアミロイドβとタウがいずれも低下し、それらを産生する酵素BACE-1も減少した。一方、神経を保護・修復するBDNFはおよそ2倍に上昇している。

つまり、認知症リスクを高める側の指標が軒並み下がり、脳を守る側の指標が上がるという一貫した改善パターンが確認された。アミロイドβやBACE-1、BDNFの改善は50〜70代のすべての年代で共通しており、60代・70代ではタウタンパク質の有意な低下も確認された。

③ 炎症・血管系のマーカーも低下した

慢性的な炎症や血管の異常もアルツハイマー病の病態に関わるとされる。本研究では炎症性サイトカインと血管新生因子の変化も調べた。

炎症・血管系マーカーの変化は以下の通り。

水素吸入前後のMCP-1(A)、IL-6(B)、VEGF-A(C)の血清中濃度(Rahman et al., 2023, Fig.7より引用)
(A)MCP-1(pg/ml)、(B)IL-6(pg/ml)、(C)VEGF-A(pg/ml)。いずれも水素吸入後に有意に低下した。*** p < 0.001、** p < 0.01、* p < 0.05。(Rahman et al., 2023, Fig.7より引用)
マーカー役割
MCP-1炎症細胞を呼び寄せる物質
IL-6炎症を促進するサイトカイン
VEGF-A血管の新生に関わる因子

3指標とも有意に低下した。とくにMCP-1は年代別のサブグループ解析でもすべての年代で有意な改善が見られ、水素吸入の抗炎症作用の一貫性が示された。

安全性

白血球の総数および各種分画(好中球・リンパ球・単球・好酸球・好塩基球)は、水素吸入の前後で有意な変化がなく、免疫系への悪影響は認められなかった。

考察と今後の課題

水素には、細胞を傷つける有害な活性酸素だけを選択的に除去する性質がある。本研究で観察されたROS・NOの低下はこの抗酸化作用の反映であり、それに伴ってBACE-1の発現やアミロイドβの蓄積が抑制された可能性がある。BDNFの上昇も、酸化ストレスの軽減が神経保護的な環境を作り出した結果と考えられる。

ただし、本研究は対照群のない単群・非盲検試験であり、プラセボ効果や自然変動の影響を排除できない。認知機能の直接評価は行われておらず、バイオマーカーの改善が実際の認知機能向上に結びつくかは未検証である。

また、水素発生装置メーカーの支援を一部受けた研究である点にも留意が必要である。今後は、ランダム化比較試験と認知機能の直接評価を組み合わせた検証が求められる。

水素健康活用研究所編集部の感想

本研究は、地域に暮らす40〜70歳の成人51名を対象に、わずか4週間の水素吸入で認知症に関わるバイオマーカーが幅広く改善したことを示した報告です。酸化ストレス・アミロイドβ・タウ・BDNF・炎症マーカーと、多角的な指標で一貫した改善傾向が見られた点は注目に値します。

ただし、対照群のない単群試験であり、認知機能の直接的な評価は行われていません。そのため、「水素を吸えば認知症を予防できる」と結論づけるのは時期尚早でしょう。あくまでバイオマーカーレベルの変化が確認されたに留まります。

なお、実際のアルツハイマー病患者を対象とした研究では、8名への6か月間の水素吸入で認知機能スコアが改善した報告や、273名の大規模試験でドネペジルとの併用効果が確認された報告もあります。今後の更なる解明に期待したいところです。

三國ユウジ 先生のアバター

医師

三國ユウジ 先生

本研究では水素吸入が、安全にアルツハイマー病の改善に寄与する可能性が示されています。各種のマーカーについて54人と決して少なくない人数での有意な研究結果がまとめられたことは注目に値します。基本的には、多くの研究がそう示すように副作用はないか軽微と考えられますが、中長期的なフォローアップによる副作用を評価する必要がある他、同じく中長期的な効果の評価と最適な水素の投与量の検討などが待たれます。

用語解説

用語解説
アルツハイマー病(AD)認知症の原因疾患で最も多い。脳にアミロイドβやタウが蓄積し、神経細胞が徐々に壊れていく
ROS(活性酸素種)体内で過剰に発生すると細胞を傷つける酸素由来の物質。老化や神経変性疾患の一因とされる
NO(一酸化窒素)体内で血管拡張や情報伝達に使われるガス分子。過剰になると酸化ストレスの原因になる
BACE-1アミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断してアミロイドβを作り出す酵素
BDNF(脳由来神経栄養因子)神経細胞の成長・生存・修復を促すタンパク質。学習や記憶にも重要な役割を果たす
アミロイドβ(Aβ)脳に蓄積してアルツハイマー病を引き起こすとされるタンパク質。Aβ1-40とAβ1-42がある
タウ(Tau)神経細胞の骨格を安定させるタンパク質。異常にリン酸化されると(p-Tau)神経原線維変化を起こす
MCP-1免疫細胞を炎症部位に呼び寄せるケモカイン。脳の慢性炎症との関連が報告されている
IL-6(インターロイキン-6)炎症を促進するサイトカインの一種。アルツハイマー病患者の脳でも上昇が見られる
VEGF-A血管の新生を促す成長因子。アルツハイマー病との関連が指摘されているが、役割は複雑である
カニューレ鼻に装着する細い管。水素ガスや酸素の吸入に使う医療器具
ランダム化比較試験(RCT)参加者を無作為に介入群と対照群に分ける臨床試験。最も信頼性の高い研究デザインとされる

論文情報

論文タイトル

Effects of Hydrogen Gas Inhalation on Community-Dwelling Adults of Various Ages: A Single-Arm, Open-Label, Prospective Clinical Trial(さまざまな年齢の地域在住成人に対する水素ガス吸入の効果:単群・非盲検・前向き臨床試験)

引用元

Rahman, M. H., Bajgai, J., Sharma, S., Jeong, E.-S., Goh, S. H., Jang, Y.-G., Kim, C.-S., & Lee, K.-J. (2023). Effects of Hydrogen Gas Inhalation on Community-Dwelling Adults of Various Ages: A Single-Arm, Open-Label, Prospective Clinical Trial. *Antioxidants*, 12(6), 1241. https://doi.org/10.3390/antiox12061241

関連する疾患や目的
にんちしょう
認知症
免責事項
本記事は公開された学術論文の内容をわかりやすく解説したものであり、医学的なアドバイスや診断・治療の推奨を目的としたものではありません。紹介する研究結果は特定の条件下で得られたものであり、水素療法の効果・効能を保証するものではありません。健康上の判断や治療に関しては、必ず医師など専門家にご相談ください。
水素健康活用研究所 編集部
水素健康活用研究所 編集部一般社団法人水素健康活用研究所

水素吸入に関する研究論文・疾患別考察・基礎知識をまとめる編集チーム。特定メーカーに属さない中立的な立場で、医師監修・ファクトチェック体制のもと、エビデンスに基づく情報を発信しています。

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  3. 水素吸入で認知症に関わる血液指標が幅広く改善
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  2. 2研究の背景と目的
  3. 3研究方法
  4. 4研究の主な結果
  5. 5考察と今後の課題
  6. 6水素健康活用研究所編集部の感想
  7. 7用語解説
  8. 8論文情報

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公開日:2026/04/04
目次
  1. 結論
  2. 研究の背景と目的
  3. 研究方法
  4. 研究の主な結果
    1. ① 酸化ストレスの指標が低下した
    2. ② 認知症に関わるバイオマーカーが幅広く改善した
    3. ③ 炎症・血管系のマーカーも低下した
    4. 安全性
  5. 考察と今後の課題
  6. 水素健康活用研究所編集部の感想
  7. 用語解説
  8. 論文情報
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公開日:2026/04/04

目次

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  1. 結論
  2. 研究の背景と目的
  3. 研究方法
  4. 研究の主な結果
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